どこまで社会保険を節約しても大丈夫?捕まったりしないの?

小さな会社が生き残るための労働保険と社会保険の話、税金や節税保険も含めて、いよいよ実体験も含めた「ここまでセーフ!」のキワドイお話です。

小さな会社が生き残るための労働保険と社会保険の話<目次>
 ~序章~「会社の保険、これだけは知っといて!」
~第二章~「社会保険、いつ入る?入らなかったらどうなるの?」
~最終章~「社会保険の節約、ここまではセーフ!」

社会保険料、うまいこと安く済ます方法や裏技はあるの?

社会保険の保険料を上げない小技

社会保険の保険料は毎年4~6月の給与額によって決定しますので、それらの月の残業代などを後ろ倒しにする小技があります。

この場合でも、後ろ倒し分を一気に払ってしまうとその月の給与が急増してしまい、臨時に保険料が改訂されてしまいますので、改訂されない程度に数ヶ月かけて支払う必要があります。

スタッフ側からすれば、残業した分の給与が支払遅延状態になるわけですし、そもそもグレーな行為なのでどこまでリスクを取るかは難しいところです。

 

会社が解散しちゃえば追ってこない?!

社会保険の保険料は、会社経由で支払います。

支払が滞れば未納として請求されますが、会社が解散しちゃったら未納分はウヤムヤになっちゃいます。

実際には口座の差し押さえも行われますが、口座残高ゼロであればそれ以上の追及もされず、督促だけが来る状態になるようです。

会社の解散がらみだと、法人税の未納分や、スタッフの所得税(法人天引き分)の未納分まで 法人解散で逃げきれてしまったなんて話もあります。

とはいえ、解散前提で会社を経営するのは本末転倒ですし、税金は社会保険料より取り立ては厳しいので、あまりギリギリを攻めすぎないほうが身のためですね。

 

社会保険加入で社長の年金を積み増ししたパターン

別の会社の例ですが、「社会保険に加入しなくてもいいや」と放置していた社長が、スタッフ増加を機に自分の給料を圧縮して低い等級で加入し、年金部分を二階建てにした例もあります。

この場合は高齢なことと、会社からの直接の給料を圧縮しても生活に問題が無いことでうまく厚生年金部分を微増させることができました。

会社からの直接の給料を圧縮してしまいつつ、会社と自分のお財布がハッキリわかれてないような会計だったのでこの社長の場合は生活ができましたが、実際はグレーなのでどこまでリスクを負って攻めるかですね。

 

会社を2つ作ったらどうするの?

建前上、それぞれの会社で社会保険に加入して、支払われる給料などで按分します。しかし、実際には1社が社会保険に加入していればお目こぼし状態となります。

※もちろん、それぞれの会社でスタッフを雇うようになったら両方とも社会保険に加入してください。

その場合でも、どちらの会社にも関わっている社長やスタッフも1社加入で大丈夫でした。(あくまで、結果的に、ですよ!)

複数の会社から給料や報酬を受けている場合、マイナンバー導入でバレてしまうという話もありましたが、社会保険系の報告書にはマイナンバーの記載義務はなかったりします。

このあたりも、ちゃんとスタッフを雇って真面目な会社経営をするなら正々堂々とすべき部分ですが、”自分ひとり社長の会社”なら多少のリスクを覚悟して進む抜け道という感じですね。

 

自分と配偶者でそれぞれ会社をやっている場合はどういうやり方が一番良いの?

社会保険の健康保険は扶養家族の制度がありますので、配偶者の扶養に入れるほど給料を少なくして節約するパターンも考えられます。

それぞれの会社があまり儲けがなく、給料おとして分配できるお金が少ない場合は有効ですが、それなりに給料を出せるようになった場合には自分たちで自由に使えるお金が減ってしまいますので、あまり意味がない手法になります。

 

あくまでうまくいった例としてですが…

旦那さんのA社、奥さんのB社があって、それぞれに経営者や従業員となっている状態ですと、両方の会社とも社会保険に加入する義務があり、旦那さん・奥さんともに両方の会社の社会保険に入ることになります。

冒頭の「会社を2つ作ったらどうするの?」と同様のケースですが、A社のみ社会保険適用の会社とし、B社は未加入のままでした。

A社は社会保険に加入し、両者ともA社の社会保険に入っていたところ、B社は他にスタッフがいなければ、適用会社となるようにうるさく言われずに済んでいます

 

報酬を増やすと年金や保険料が高くなるし、会社に留保しておくと法人税が高くなるし、一番良いバランスは?

経営者の給料・報酬は税理士と相談するのがベスト!

年収700万円ラインで個人にかかる所得税が不利になってきますので、どのくらいの報酬額にするか(抑えるか)を税理士さんと相談して決めると良いと思います。

税制は複雑で、申告しないと利用できない節税制度もありますので、素人が勉強するより信頼できるプロである税理士さんに任せた方がベストですね。節税効果を買う感覚です。

 

スタッフへの分配は福利厚生で還元するのも一手!

スタッフへの利益分配をして、会社への留保分を圧縮して法人税を節約するのは良心的な会社だと思います。

とはいえ、何も考えずに昇給としてしまうと、給料は下げにくいので会社が不調な時に困ってしまいます。お金でスタッフへ利益分配するなら、賞与の形が無難でしょう。

余裕があるときに厚くして、不調な時に廃止しやすいのは福利厚生で還元する形です。昼食の補助、無料のドリンクなど現物支給は社会保険料の算定基準として捕捉されません。

 

ただし、福利厚生として還元する場合、スタッフには説明を怠らず、定期的に福利厚生とする対象を変えるべきです。

人間は慣れてしまうもので、当初はありがたがっても、いずれ「それがあって当たり前」になってしまい、会社から見ればモチベーションやアウトプットの向上には繋がらない出費になってしまうからです。

 

儲けが無いとき、逆に儲けが出すぎたときには良い方法あるの?

年間の利益が1千万円をこえるあたりになると必ず出てくるのはこの悩みですね。

小規模企業共済で月額の掛け金を最大の20万円にすれば、年間240万円の利益圧縮が可能です。家賃の前払いも節税テクニックになりますね。

個人の所得税率と法人の法人税率が低くなるように報酬体系を半々にするといった調整もできます。

ただし個人の所得が増えると、お子さんがいる場合は、子ども手当や保育料などの行政からの支援金額が減ることもあります。誰でもOKの必勝パターンはなくて、それぞれの事情に応じて、考えてみる必要があります。

 

会社を潰す前提なら役員借入金にして会社から借金という形にして、退職金で相殺するか、または借金したまま会社を潰してしまうこともできます。経営者の退職金は税率が非常に有利です。
まぁこれも、真面目な経営を目指すのか、リスク込みで抜け穴を狙うのか、どこまでリスクオンでやるかどうかです。
ノーリスクでできる節税テクニックはそれほどのインパクトはなく、やらないよりはやったほうがマシと言う程度ですね。

 

最近だと節税保険が盛り上がって営業電話めっちゃ来るるけど、あれってどうなの?

おトクです。政府側がイタチごっこで節税保険をつぶしてまわっているくらい、おトクです。

営業電話が鬱陶しいかと思いますが、会社の利益が支払う保険料を賄えるくらいに出ていたら、加入を考えて良いと思います。

FPとして不動産業者のコンサルをしている知人も、その不動産業者に営業にきた節税保険を半信半疑で精査したところ「どう考えてもトクになる」との結論に達し、その保険の契約を勧めたとの事です。

※この節税保険(がん保険)は翌年度廃止となり、現在は加入できません。ただ、似たような節税保険が次々に出てきています。

 

支払う保険料の何割が節税に使えるのか、満期は何年後か、返戻率はどのくらいかなど、本業を圧迫しない程度に、話に乗っときましょう。

ただし、節税保険に加入したけど売上が急落、中途解約になってしまい掛け金も損した…なんてことになっては元も子もありません。
節税保険については、”自分の会社が毎月コンスタントに売上があるタイプなら◎”です。

 

さいごに

社会保険やその周辺で考えられることは、あくまで「ちょっとした節約術」です。節約術は大事ですが、会社の本業には至りません
まずは会社の本業に注力して、その本業で利益を出し、付加価値を生み出し、経営者や従業員が潤っていくのが第一のはずです。
社会保険での節約は、まだ会社の資金力がちいさく、社会保険料が馬鹿にできないスタートアップ時期には相対的に重要に見えますが、
いずれ『正規に支払ったほうが、従業員のためでもあるし、無駄に考える時間も節約できる』と思えるはずです。
社会保険料の節約をしたところで本業が大きく成長できるわけではないですからね。