建前上は会社を作ったら社会保険に加入する。それはわかっているけど、実際いつ入るの?入らなかったらどうなるの?

社会保険以外にも、どんなことをやらなきゃならないの?

小さな会社が生き残るための労働保険と社会保険の話、今回は実際のところ「社会保険にいつ入るかべきか?」というお話です。

小さな会社が生き残るための労働保険と社会保険の話<目次>
~序章~「会社の保険、これだけは知っといて!」
~第二章~「社会保険、いつ入る?入らなかったらどうなるの?」
~最終章~「社会保険の節約、ここまではセーフ!」

会社を作ったら、社会保険(健康保険や年金)って加入しなければならないの?

会社を作ったら、社会保険に加入する義務があります。

会社を作ったことがある方なら、誰でも知っているはずです。義務です、加入しましょう。
…それじゃ、このブログの意味は無いですよね。

  • 加入する義務がありますというけど、じゃあ、いつ?
  • もし加入しないで放置しておいたら、どうなるの?

今回は、このあたりの現実的なお話を、経験談を交えて記事にしてみようと思います。

 

どうしても社会保険料を払いたくない!

この記事の後半でもお話ししますが、自分だけの会社なら社会保険に加入していなくても、なにも起きません

会社から役員報酬を受け取っていても、なにも起きません。(脱法状態ですけどね。)

しかし、人を雇う段階になると、自分だけのリスクでは負いきれない部分になりますし、社会保険に加入して社会保険料を払うことになります。

ただ、多少のリスクを負えば、この部分もクリアできなくはないと言えます。

業務委託契約にして、「スタッフは雇わずに、自分の会社の仕事をしてもらう」スタイルならば、会社で労働者として雇っている訳ではないのでなんとか抜け道になると言えます。

ただし、そのスタッフとの契約をごまかして業務委託にしてしまうのは訴訟リスクも考えると、社会保険料の節約以上のリスクテイクであると思います。

お互い、業務委託契約であると納得してもらえるケースにのみ、使える手段だと認識してください。

 

社会保険の団体などのうまい選び方はあるの?

一部の業界には、オイシイ団体もあるけれど…

大手企業にはその企業のみで構成されている健康保険組合があり、保険料もかなり優遇されています。

これは構成員、すなわちその企業の社員の年齢構成や疾病率がだいたい把握でき、保険給付の見通しが立てられるためです。

また、IT業や不動産業の健康保険組合といった、会社を横断して同業の企業を対象とした健康保険組合があります。

ただし、ある程度の企業規模かつ、協会けんぽ(通常加入する健康保険)加入歴○○年といった条件があり、当初からそういった(お得な)健康保険組合に加入する事はできません

また、厚生年金については、厚生年金基金がありますが、会社側の負担を増やす事になりますし、こちらも大企業対象のお話しであって、スタートアップ企業は対象にはなりません

 

小さな会社の場合はほぼ選択肢はありません

上記のように、社保はスタートアップ時期の会社には、ほぼ選択肢はありません

50人程度の社員をかかえる中小企業になれた頃に、やっと業界の健康保険組合が選択肢にのぼってくるくらいです。

まずは、普通の協会けんぽと厚生年金に加入し、「会社が大きくなったらお得な団体に移ろう」と会社を成長させるのがベストですね。

 

要注意!社会保険関係が”喉に刺さった小骨”になることも!!

これは「会社と社会保険加入」よりも広い範囲のお話になってしまうのですが、国民年金などの社会保障の保険料を未納状態にしている方は要注意です。

会社が軌道に乗ってきて、いざ借入をしようと言うときには事業主が個人で連帯保証人となるケースが多いのです。

そのときに、社会保障の保険料に未納があり、差し押さえされていたりすると連帯保証人となれない場合があります。

事業も上向き、新たな案件の目処もある、より大きく成長するための借入の審査も大丈夫そうだ…そんな時に数万円の未納で一千万円超の融資がダメになってしまうのは悔しいですよね。

厚生年金や健康保険に切り替える前で、国民年金や国民健康保険のままであっても、融資の審査には響きませんが、”未納があって差し押さえ”はNGです。ここは十分注意していただきたいポイントです。

 

他にもやらなきゃならないことや準備しておかなければならないこと、見込んでおく費用は何があるの?

会社を作って、さらに人を雇うとなると、前回お話しした労働保険を含め、以下のような準備をしておく必要があります。

 

労働保険について

前回の記事でお話ししたとおり、労働保険(労災保険と雇用保険)は保険料も負担が軽く、加入するのに心理的・経済的ハードルがひくい保険です。

スタッフを雇ったタイミングで加入すると良いでしょう。

簡単な事務手続で済みますが、その時間で本業をこなしたほうが儲かる場合はお近くの社労士さんに任せるとラクです。

 

就業規則について

常に10人以上のスタッフを雇うようになったら、就業規則の作成も必要になります。

始業と終業の時間や賃金についてなどの取り決めを文書化しますが、10人以上のスタッフを雇えるようになる時期には自社の傾向も分かってきているかと思います。

就業規則は文書となり経営者側を縛るものになりますので、勉強をして自分で頑張って調製するか、社労士さんと話し合って作るのも良いと思います。

 

労使協定について

時間外労働などの取り決めを文書化したものが労使協定です。(ここでは、いわゆる「36協定」についてお話ししています。)

就業規則は会社の規模がある程度大きくなってきた時期で良いですが、時間外労働=残業はスタッフが一人の場合でも発生するはずなので、スタッフを雇った際には作成する必要が出てきます。

結局、だれかを雇ったらこれらの手続に追われますので、スタッフを雇おうと思ったタイミングで社労士さんに一度相談してみるのがベストだと思います。

社労士さんに頼んだ場合の相場は、上記3つを合わせてスポット契約で30万円くらいが上限でしょう。

 

社会保険、いつ入れば良いの?

入らないまま放置していたらどうなるの?

会社を作ってしばらく経つと、社会保険の加入のお知らせが来ると思います。

健康保険や厚生年金を管掌する側では、強制加入にあたるとして職権で加入手続をしてしまうことも可能ですが、まず強制加入はされません

本来なら社会保険に加入しているはずの経営者であるあなたは、自分の判断で、傷病手当金や二階建て年金というメリットを捨てて、加入しないリスクを負っているという状態になっているだけです。

 

じゃあ、いつ入るの?

会社を経営していくのと同じくらいのリスクテイクをするのに、腹をくくって同調してくれる人以外が自分の会社に入ったとき…すなわち、「自分や、自分の家族以外の他人を会社に雇ったとき」に入れば良いと思います。

(厳密には、さかのぼりで加入や保険料支払もできますので、「雇った後」、つまり試用期間を終えて、はじめて本採用の人がでたタイミングでOKです。)

確かに社会保険料は高額で、会社経営にも負担が増してしまいます。しかし、雇ったスタッフにまで加入しないリスクを負わせてしまうのはNGです。

未加入や加入していても保険料の未納付があった場合、年金受給資格や年金額にダイレクトに響いてしまいます。それがスタッフに”バレた”際のモチベーション低下もリスクであると認識してください。

逆に言えば、雇ったスタッフの社会保険代まで出せないうちは、会社でスタッフを雇うべきではないということです。

 

 

次の記事では、いよいよ「ここまで社会保険の節約をやってみた!」の実例のお話です。